We Don’t Care About Music Anyway...
ユーロスペースにて、フランス人の新人監督による、日本のミュージシャンのドキュメンタリー映画『We Don't Care About Music Anyway...』の試写を鑑賞。冒頭の夢の島とノイズミュージックの取り合わせに一瞬不安がよぎったが、それは杞憂に終わった。
坂本弘道は劇中で、音楽を聴くことは、呼び起こされる無数の記憶と対峙することだと語っているが、それはこの映画自体にも言えるだろう。セッションや独演による演奏シーンと、ミュージシャンによる座談会、そして東京都内の繁華街を切り取った映像で構成されており、それらの音と言葉と風景の断片の交差が、記憶を揺さぶる。
坂本は廃墟を歩きながら、廊下の窓や壁を叩くことで音楽を生みだす。伝統あるチェロの形状に美的な拘りがあると語りつつも、グラインダーを当てて火花をスパークさせる。屋外では鉄屑の山に囲まれながら、大友良英がターンテーブルで「レコード」を鳴らす。モノの記憶を呼び起こすようにして、新たな何かが現れる。
鉄道のレールに耳を当てるL?K?Oは、鉄で伝わる振動によって何かの到来を感じているのだろうか(すでに通過した後かもしれない)。山川冬樹は、トゥバ共和国で継承されるホーメイを、現在の日本で如何に表現すべきかを語る。誰かが持ち寄った過去の写真をみて笑う。少年時代のゲーム体験の影響を語るものもいる。
「東京の街を歩いていると、この風景がこれからもずっと残っているとは思えない」、との坂本の懸念を受けるようにして、高層ビルとクレーンで持ち上げられる鉄骨が映し出されてエンディングを迎える。鉄骨が不安定で、落下しそうに見えるのが気がかりだ…。
1/15よりユーロスペースにて公開