ランド・オブ・プレンティ

nununununu2006-07-25

昨日寝る前に観た『メゾン・ド・ヒミコ』はけっこうよかった。というか、よくないところがあまりなかった。『タッチ』にしてもそうだけど、犬童一心は、映画をうまく撮れてしまうのだろう。そこで必要とされる演技、背景、照明、音楽などの構成要素を的確に配置できてしまう。それはそれでもちろんよいのだが、それが徹底されすぎると、想像する余地のないものになってしまい、観る側の能動性をうばってしまうおそれがある。そうなると、説明を受けている感じにちかいものになってしまいかねない。たのしめたにもかかわらず、残るものが少ない映画というのは、そういうところに理由がありそうだ。泣いている柴崎コウが「いま泣いているのは、あなたが考えているどの理由とも違うわよ」みたいに言うシーンがあるが、それをセリフとして言わないのでおくのが、映画なのでは。ゲイの老人ホームに女子が現れることで、物語が駆動する。その女子が柴崎コウでなかったら、ちがった映画になっただろう。物語を駆動させる異物が何であるか。
さきほど観た『ランド・オブ・プレンティ』は、パレスチナに移住していた女子が、元ベトナム兵の叔父に会うために、久しぶりにアメリカに帰国することで物語が駆動する。叔父はテロを未然に防ぐために、誰に頼まれるでもなく、日夜街をパトロールしているのだが、姪に会うことで少しずつ心境に変化が……。アメリカの現状を問う。監督はヴィム・ヴェンダース(ドイツ人)。